ご挨拶

秋田大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学講座は、平成29年12月に旧第二内科(循環器・呼吸器内科)から独立し、平成30年5月から私、中山勝敏が初代教授として主宰しております。私は、「研究第一主義」を伝統とする東北大学を卒業し、秋田で研修し医師としての礎を築きました。その後、東京慈恵会医科大学で、今回の様に呼吸器内科の立ち上げに参画しました。同大学の学是は「病気を診ずして病人を診よ」です。こうした経験の中で、私が重視する医学における価値理念が2つあります。1つは、「サイエンスマインド」であり、もう1つは、「最良の医療の提供」です。サイエンスマインドとは、科学することに真摯であり、かつロマンを持つ精神であります。最良の医療の提供は、地域医療、先進医療を含め医療者の原点といえます。

人生90歳という高齢化社会を迎え、呼吸器疾患の重要性は増加しています。WHO(世界保健機関)が2018年に発表したThe top 10 causes of deathでは、全世界での死因における呼吸器疾患の位置として、第3位 肺炎、第4位 COPD、第7位 肺癌であると報告しています。また2030年における予想として、第3位 COPD、第4 肺炎、第6位 肺癌としています。臓器としての呼吸器は、外界と直接接していることから、病原体、喫煙、抗原などの吸入により、肺炎、肺癌、COPD、気管支喘息、間質性肺炎といった性格の異なる病態が発現します。高齢化社会ではこうした曝露が長期にわたり、また生体反応が加齢という修飾を受けることにより、呼吸器疾患の頻度が増してきているのです。

さらに、呼吸器疾患は重要なだけでなく、大変に魅力的な医学領域です。基礎となる学問としては、感染症学、免疫学、腫瘍学、病理学、生理学、画像診断学など多岐にわたります。循環器疾患や全身性疾患とも関連が深く、幅広く内科全体を見る力を必要とし、直接生死にも関わる領域です。さらに、呼吸機能検査、気管支鏡、胸腔ドレナージ、呼吸管理法など修得すべき専門的技術も多くあります。それ故にやりがいのある医学領域であり、私自身はKing of Medicineと思っています。

現在、秋田県は呼吸器専門医の数が全国の中でも少ないのが現状です。したがって私の最も重要なミッションは、学生や若い医学者に呼吸器医学の醍醐味を伝え、この領域を担う人材を育てることであると認識しております。また地域の呼吸器科医や内科系医師とも連携をとって、秋田県の呼吸器診療を充実したものにしてゆきます。我々は、正確な診断と先進の治療により、最良の医療を患者様に届けます。また、サイエンスマインドを磨いて、新しい診断と治療の潮流を切り拓いてゆきます。是非、呼吸器医学の重要性とやりがいに興味を持たれた方、そしてその臨床と研究を通じて人類の健康と福祉に貢献したいと思われる方は我々のグループに参加してください。一緒に、この若い教室を発展させて行きましょう。

呼吸器内科学講座 教授 中山勝敏